薄毛に悩むようになり、「ついに育毛剤に手を出す時が来たか」と思っている人は、少し立ち止まって考えてみてください。自分の薄毛の原因は何か、育毛剤に含まれる成分にはどんな効果があるのか、きちんと理解していますか?
薄毛に悩む人のほとんどが患っているというAGA(男性型脱毛症)を治す場合、医薬部外品である育毛剤だけでは力不足。安易に育毛剤に手を出す前に、育毛剤が持つ効果について、知っておきましょう。
育毛剤の多くは「医薬部外品」であり、薄毛を治療する効果はない
育毛剤の多くは、薬機法(旧薬事法)における「医薬部外品」に分類されます。
医薬部外品とは、厚生労働省が許可した効果・効能を持つ成分を含んでいるものの、病気の「治療」ではなく「予防」を目的に作られた製品のことを言います。
医薬部外品の育毛剤は、そもそも薄毛を「治療」する目的で作られているものではありません。
育毛剤が目指すのは、あくまでも頭皮環境の「現状維持」と「予防」。
すでに薄毛で悩んでいる人に対して育毛剤ができるのは、「今生えている髪の毛を抜けにくくすること」だけです。
広告やCMでよく目にし、ドラッグストアなどで気軽に手に入るような育毛剤や育毛シャンプーの多くは、薄毛治療に有効な成分を含んでいません。
多くの育毛剤は、薬ではなく化粧品に近い扱いだという認識が正しいでしょう。
成分と効果を知ろう! 市販されている5種類の育毛剤を徹底比較
「有効成分」と謳われている配合成分について、人気のある5種類の育毛剤を比較して見てみましょう。
今回は便宜的に、5種類の育毛剤を「育毛剤A〜育毛剤E」として成分を詳しく見ていきます。
育毛剤Aの薄毛に有効とされている成分
「3ヶ月以内に78%の人が発毛効果を実感した」と謳う育毛剤Aについて、有効成分を見てみましょう。
育毛剤Aの主成分
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M-034
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ペルベチアカナリクラタ
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スサビノリエキス
M-034は、保湿効果のほかに、毛母細胞を包んでいる外毛根鞘(がいもうこんしょう)の増殖を増進する作用があると言われています。
M-034によって、ミノキシジルと同等の発毛効果が得られると主張する育毛剤メーカーもありますが、科学的根拠は認められていません。
育毛剤Aに含まれているペルベチアカナリクラタは、岩の多い海岸に多く生息する海藻に含まれている成分の1つ。
過酷な環境に置かれているペルベチアカナリクラタは、波しぶきなどから少ない水分を得て生きているため、強い生命力と保水力を期待できるのだとか。
ペルベチアカナリクラタについて、化粧品区分での配合目的は「皮膚保護剤」に分類されており、皮膚の保護や皮膚の老化防止に効果を発揮するとされています。
また、もう一つの成分スサビノリエキスは、スサビノリという海藻から抽出されたエキスです。
スサビノリエキスには、ヒアルロン酸と同等かそれ以上の保水力があると言われており、「皮膚のコンディショニング剤」として配合されています。
育毛剤Aには、皮膚の保護によい成分が多く含まれているものの、科学的根拠に基づいて「毛が生える」と言える成分は含まれていないことがわかります。
育毛剤Bの薄毛に有効とされている成分
続いて、薄毛のタイプを選ばずに使えると謳う育毛剤Bの有効成分を見てみましょう。
まず、独自成分バイオポリリン酸という成分は、保湿効果を持つ酵母だということです。
ポリリン酸は食品によく含まれている成分で、防腐効果や変色防止を目的に使われています。
頭皮に浸透しやすく再開発されたバイオポリリン酸は、「毛乳頭に働きかけて薄毛対策をサポートする」と言われていますが、科学的な根拠があるかというと疑問が残ります。
そして、新配合されたバイオパップスという独自成分。
バイオパップスは海藻由来の成分で、毛周期に働きかけて薄毛改善に効果を発揮するということですが、詳しいメカニズムは何も明らかにされていません。
育毛剤Bには、「男性型脱毛症診療ガイドライン」や厚生労働省によって認可された、薄毛治療に有効な成分は一切使われていません。
よって、発毛効果は期待できないと考えるのが妥当でしょう。
育毛剤Cの薄毛に有効とされている成分
M字ハゲに対する生え際治療に効くと謳う、育毛剤Cの有効成分はどんなものなのでしょうか。
育毛剤Cの主成分
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ヒオウギエキス
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センブリエキス
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セファランチン
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グリチルリチン酸2K
ヒオウギエキスは、ヒアルロン酸やコラーゲンの作用を促進して、肌を保湿する効果があります。
抜け毛を起こすホルモンに作用するという説もありますが、科学的にヒオウギエキスによる発毛効果が認められているわけではありません。
センブリエキスは育毛剤によく含まれている成分ですが、保湿効果を目的として配合されており、育毛剤Cが掲げているような「発毛促進」効果は期待できないでしょう。
セファランチンは、錠剤としても売られており、抗アレルギー作用や、血行促進効果があります。
育毛剤Cで「発毛促進」が謳われているのは、頭皮を清潔に保ったり血行をよくしたりと、頭皮環境を整えることが期待できるからでしょうか。
グリセルリチン酸2Kには、抗炎症作用があります。
頭皮の炎症を抑える効果が期待できるため、フケやかゆみ対策としては効果を発揮するかもしれません。
「フケ・かゆみを抑える」という文句については、それほど間違っていないと考えられます。
とはいえ、育毛剤Cも、発毛効果を期待できるほどの有効成分は含まれていないと考えて間違いないでしょう。
育毛剤Dの薄毛に有効とされている成分
高い知名度と人気を誇る育毛剤Dの成分について、最も多い割合で生まれている3つの成分の効果を見てみましょう。
育毛剤Dの主成分
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センブリエキス
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グリセルリチン酸2K(グリセルリチン酸二カリウム)
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ジフェンヒドラミン塩酸塩
センブリエキスには保湿効果が、グリチルリチン酸2K(グリチルリチン酸二カリウム)には抗炎症作用が期待できますが、どちらも「毛を生やす」効果を持つものではありません。
ジフェンヒドラミン塩酸塩という成分には、かゆみなどの原因となるヒスタミンの作用を抑える、抗ヒスタミン作用があります。
しかし、配合されている割合の多い3つの成分を見ても、発毛効果が期待できる作用はどこにもありません。
育毛剤Eの薄毛に有効とされている成分
大手化粧品会社から発売されている育毛剤Eの成分は、発毛が期待できるのでしょうか。
育毛剤Eの主成分
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t-フラバノン
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ニコチン酸アミド
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ピロクトンオラミン
t-フラバノンには、毛球を大きく育てる効果があると言われています。
毛が生えるわけではありませんが、毛球が大きいほどその毛は抜けにくくなると考えられているため、抜け毛予防効果は期待できるかもしれません。
ニコチン酸アミドには、血行促進効果、そして毛母細胞に働きかけることによる抜け毛予防効果があると言われています。
血行を促進して頭皮環境を整え、毛母細胞に作用するなら、今生えている毛に対する抜け毛予防にはなるでしょう。
しかし、新しく毛を生やす作用があるわけではないので、注意が必要です。
ピロクトンオラミンには殺菌作用があるため、頭皮を雑菌から守る効果が期待できます。
それでもやはり、発毛効果に期待するには無理があるでしょう。
男性ホルモンが原因である薄毛を前に、多くの育毛剤は無力である
日本で薄毛に悩んでいる成人男性1,200万人のうち、ほとんどがAGA(男性型脱毛症)と言われています。
AGAを治療するためには、その原因である男性ホルモンの働きを抑制しなければなりません
現在、男性ホルモンを抑制する作用を持ち、AGA治療効果があると認められている薬は、プロペシア(フィナステリド)、ザガーロ(デュタステリド)の2種類のみです。
ミノキシジルも、「男性型脱毛症診療ガイドライン」にて推奨されている薬の1つであり、プロペシアやザガーロとは異なるアプローチによる
発毛効果が科学的に認められた医薬成分です。
育毛剤の中でも、医薬品として認められた「リアップ」や「メディカルミノキ5」はミノキシジルを配合しています。
数少ない「髪が生える育毛剤」に分類されますが、他の育毛剤とは違い医師の処方を受ける必要があります。
今回取り扱った育毛剤に含まれる成分のなかでは、唯一t-フラバノンだけが、「男性型脱毛症診療ガイドライン」にて「科学的根拠はないが用いてもよい」と記載されています。
しかし、育毛剤を使うのみで髪の毛が生えるのを待っていては、進行性であるAGAの症状が悪化していくだけかもしれません。
育毛剤を使うことが全く意味を持たないというわけではありませんが、男性ホルモンが原因である薄毛を前に、いくら頭皮環境を整えても髪の毛は生えてこないのです。
市販の育毛剤は、薄毛・抜け毛を予防する目的で使おう
市販されている育毛剤は、あくまで頭皮環境を整え、髪の毛を「生えやすく・抜けにくく」するためのものです。
髪の毛を「生やす」成分は含まれていないので、AGAを治療する効果はありません。
したがって、「薄毛を改善したい、ハゲを治したい」という人は、育毛剤だけに頼ってはいけません。
AGAヘアクリニック(ヘアクリ)をはじめとするAGA専門クリニックで、効果が認めれたAGA治療薬による治療が受けられます。
クリニックで処方されるAGA治療薬は、れっきとした医薬品であるため、髪の毛を「生やす」効果がはっきりと認められおり、無料カウンセリングなどで医師に直接治療薬について質問することが可能です。
薄毛・抜け毛に少しでも悩んでいる人は、育毛剤選びで頭を悩ますのではなく、今すぐAGAの専門クリニックで医師に相談しましょう。